某ネトゲでの崩壊録 2

 マンコに私が干され始めてからというもの、私は極力ギルド内でPTを組み、ダンジョンに出かけることにしていた。

しかし折り合いの悪い日というのはあるもので、6人PTのうちヒーラーだけが足りないときが来た。普段であればヒーラーなしで回せる狩場を選択したところだが、その日は連休の中日だった。人も多く、稼げれば戦利品は高値で売りさばける。この日を逃す手はないと、メンバーのひとりが全体チャットで叫んだ。

「鉱山 高難度狩り数h ヒーラー@1」

ほどなくやってきたのはレベル55の僧侶、推奨レベル63の鉱山に挑むには装備もレベルも力不足。まともにステータスを見ずに招待を飛ばしたメンバーを叱責しようとキーボードに手をかけた瞬間、チャットログに文字が浮かんだ。

 

「よろです〜(﹡ˆ﹀ˆ﹡)」

 

 全員に衝撃が走った。マンコだ。

まさかこの嫌われ者の私のPTに好き好んで入ってくる膣がいるとは誰も思っていなかった。不意をつかれた我々は、なされるがままに鉱山へ足を向けることになる。

 

ここでPT構成を確認しておこう。

忍者のYくん、司教のNくんとAくん、サムライ兼ギルドマスターのOくん、そしてマンコ僧侶、私。この6人だった。

以下、メンバーはこの名前で呼称しようと思う。

 

果たして狩場に到着した我々は、ヒール技術に一抹の不安を抱えながらも狩りを開始した。予想に反してプレイヤースキルはまともであったが、ステータス不足でじりじりと消耗していくマンコ。それを見守る我々。時間は刻々と過ぎ、やがて私は一つの違和感に気づいた。

後ろで魔法を撃っているべきAくんが、じりじりと前に出てきている。その立ち位置はまるで、マンコを流れ弾から守っているかのようだった。

私が注意すると大人しく引き下がるが、しばらくするとまた前に出てくる。やはりおかしい。この場の狩りに支障はないが、後できっちり問い詰めておくべきだなと心に刻んだころに、マンコがこんなことを言い出した。

 

「疲れちゃったんですけど、ちょっと休憩できませんか〜?^^」

 

舐めてんのかこのクソアマ。MMOは限られたリソースを如何に管理するかがキモであり、休憩など許されない。我々は72時間耐久狩りまでしたことのある仲であったので採択はされないはずだったが、ここでAくんの発言が投下される。

 

「おっけー、じゃあ休憩にしよう^^」

 

は?

 

明らかにおかしい。そう思ったが、紳士な私はPTチャットで問い詰めることはせず、まずはAくんにウィスパーで聞いてみる。

 

私:なんで休憩とか言ったん?

A:いや、マンコちゃん疲れたって言ってるんだしちょっと休もうや

私:普段休憩してないやろ

私:時間の無駄じゃん

A:お前そんなんだから童貞なんじゃねーの

私:いや男とか女とか関係ないやろ……

 

悲しいかな童貞である。なんかうまいこと丸め込まれて、15分ほど休憩を取った。

そして狩りの終わり、戦利品を売却しゴールドを分配したところで問題が発生する。

 

A:そういえばマンコちゃん、ギルドは?

マンコ:入ってないです〜

A:そっか!良かったらさ、ウチ来ない?

マンコ:え!いいんですか^^

 

 

あ???????

 

なんだこいつは。マンコに魅了の魔法でもかけられているのか?さすがに苦言を挟む。

 

私:さすがに急すぎでしょ

私:Yもなんか言ってやれ

Y:いいんじゃねえの

Y:やる気あるみたいだし

 

 

どうやらマンコの危険性に気づいているのは私だけのようだった。その場で声高に叫ぶこともできず、私は「このマンコはまともかもしれない」と祈ることしかできないままに、彼女はギルドに加入する運びとなった。

 

 

 

3に続きます。